てっさ包丁(ふぐ引き包丁)とは?他の包丁と何が違うの?
てっさ包丁とは、ふぐを捌くためだけに作られた専用の包丁です。
他の料理用の包丁とはどんな違いがあるのでしょうか?
ここでは、てっさ包丁の歴史、特徴や美味しさに違いがあるのかといったことについてまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
てっさ包丁の歴史
てっさ包丁はてっちり発祥の地・大阪で誕生しました。
大阪府堺市にある水野鍛錬所(1872年創業)で開発され広まっていったと言われています。
てっさ包丁が出来た正確な年代は特定できていないようですが、全国的にふぐが解禁され、広まりはじめた1892年頃だと言われています。
大阪はふぐの消費量で日本一なので、ふぐ職人やふぐ料理を出すお店の数が他の地域に比べて多く、より良いものを造りたいという職人らの要望を受けて「てっさ包丁」が作られたそうです。
てっさ包丁の特徴
てっさ包丁の特徴は、刃渡りの長さと刀身の薄さです。
刃渡りはおおよそ18センチ〜36センチで、だいたい27センチくらいのものが一番扱いやすいと言われています。
長い刃で“一気に引き切る”のがふぐ刺しを引く時には重要です。
なぜなら、そうしないと身が崩れて細胞が壊れ美味しさが損なわれてしまうからです。
そのため腕の良い職人は、扱いづらくても30センチ以上のより長いものを使います。
てっさ包丁の刃の幅は薄いものだと3ミリ以下の物もあり、刺身包丁や柳刃包丁と比べてとても狭いです。
ふぐの細胞が傷つかないように切るためには、それだけ包丁の刃も薄くなければいけないわけですね。
てっさ包丁は切れ味を重視して作られていますから、そのぶん耐久性、頑丈さでは劣ります。
刃を研ぐのも注意が必要ですし、刀身が曲がりやすかったりとデリケートなので扱いには気を付けなければいけません。
なぜてっさ包丁でなければいけないの?
薄く切る必要があるためです。
ふぐは低脂肪、筋肉質、弾力のある硬い身体をしています。
他の白身魚に比べると段違いに低脂肪で引き締まった高たんぱくな身体を持った魚なんですね。
そのためふぐを刺身で食べるためには、薄くしないと硬すぎて食べにくいんです。
通常ふぐ刺しは1〜2ミリ程度の薄さに切りますが、身の薄さは毎回個体差に合わせて職人が調整してします。
個体毎に最適な薄さというものがあり、それがふぐ刺しの美味しさに影響してくるため、そのような微妙な調節はてっさ包丁でなければ難しいのです。
弾力性の高いふぐの身を食べやすく、
旨味が損なわれないような適度な薄さで引くためには、職人の技術はもちろん「てっさ包丁」は欠かせないのです。
いかに美しく引くか。
ひと引きで切れるかどうか。
てっさ包丁はそこを一番に考えて作られています。
包丁の切れ味ひとつで大きく違う美味しさ
包丁の切れ味ひとつで美味しさが大きく違ってくると聞くと、そこまで差はないだろう。
ちょっとオーバーに言ってない?と思うかもしれません。
しかしうちの職人に言わせるとこれは紛れもない事実だそうです。
ふぐに限らず刺身の美味しさは、鮮度はもちろん、いかに身の細胞を潰さず旨味を逃がさないように切るかということがとても大事なんですね。
切れ味の良くない包丁でふぐを引こうとすれば、どうしても力を入れて引くことになってしまいますから、その時の圧力で身が潰されてしまいます。
そうすると痛みが早くなり、食感も悪くなっていきますし、見た目の美しさも損なわれます。
切れ味ひとつで明らかに美味しさに違いが出るのです。
ふぐ刺しの美味しさは切れ味を追及して作られたてっさ包丁ならではと言えます。