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ふく百話(92)

「旬の話題」

ふくに旬があり、長い間季節にこだわってきました。秋の彼岸から春の彼岸までです。それに合わせて「わけぎ」や「だいだい」の旬もありました。ふくちりの鍋物は冬が旬です。さらに、ふくに毒があり長い人類の歴史で多くの人の命を奪ってきました。しかし、魔性の魅力ゆえに多くの人々を魅了し続けています。

ふくの旬が、毒が、そして安全性が食文化を生み、芸術的なふく刺しを生み出し多くの文献・芸術作品を誕生させたのです。数ある魚の中でも「ふく」は特別な魚だと思います。養殖フグの出現で季節感がなくなり、消費・観光の面ではむしろ年中、ふくが食べられる方が消費拡大になります。また天然物、養殖物の区別にこだわる人は限られた通のみとなりました。球根から栽培する「わけぎ」は手間がかかるので生産が減少、今はほとんど種から栽培する小ネギです。各地の自慢果汁ポン酢の生産で、ダイダイにこだわる人も専門家以外いません。フグ毒についても危険な肝臓を無毒化する養殖技術も進んでいます。人間の食に対するこだわりは「ふく食文化」に大きな影響を与えています。養殖物が主流なのは仕方ないとしても「フグ肝」まで食べることが「下関ふく」のブランド力にどのように影響するのか、業界関係者は認識を統一すべきだと思います。

私は「ふくの肝は食べない」がブランド力は強いと思います。何でも食べられるより、毒に気を付けなければならない。魚釣りを含め素人料理ではフグ毒による中毒が時々起きる。肝を食べる話題や美味しさよりも「フグの肝は食べられない」方が話題性があると思うのです。ふくの歴史も食文化も芸術も「フグ毒」があったからだと思います。フグ肝の食用化について最終的な責任が生じる厚生労働省は今までの経過を見れば、解禁への動きは慎重です。

そのような状況にあっても、旬の話題の多さは、ふくという魚が「特別な魚」だと改めて教えてくれます。その中から3つの話題を紹介します。

2月9日「ふくの日」神事が南部町恵比寿神社で行われ、福島県相馬市の全国ふぐ連盟福島県「福とらの会」から視察がありました。(2月25日付山口新聞)。相馬市の関係者は福島沖で漁獲されたトラフグのブランド化を目指しています。南風泊市場初競りに福島県からの出荷があり注目されています。記事によれば早朝の南風泊市場視察、天然物と養殖物を区別して販売、独特の袋セリ、雌雄の見分け方等、大いに勉強になったとのこと。「東北にフグの食文化はないが将来的に地産地消を目指したい。」

私が関係者に伺ったところ、ミガキ処理ができる人材不足、加工施設の整備、除毒した後の有毒な肝臓などの処分が課題です。地球温暖化の影響で外海物は山口県見島沖から長崎県対馬沖だった漁場が遠く福島県まで拡大しています。

次は2月20日に萩「桜ふぐ」旬宣言が出されました。今年から始まりました。
宣言は道の駅シーマートの河津さくらに5輪以上の花が咲いた時です。

21日から萩市内の飲食店で様々な創作料理が提供されています。旬宣言は4月上旬まで続きます。長岡会長は「旬のマフグのプリップリッの食感と深い甘みを味わうために春になったら桜ふぐを食べに萩に行こうと、多くの方に言われるようになれば」と期待を寄せる。(21日、山口新聞)。

もう1件、2月24日「下関ふくの宮家献上」が行われました。今年で35回目です。献上者は下関ふく連盟、調理担当は伊東茂商店です。調理担当は南風泊市場仲卸人9社が交代で行っています。萩市見島沖で漁獲された最高級の天然トラフグを早朝に調理して、赤間神宮でお祓いを受け、飛行機で東京へ。連盟役員が各宮家にお届けします。献上後、皇居宮内庁に挨拶に伺います。

私が市長の時は七宮家でしたが、今年は四宮家でした。市長在任中は「宮家献上」に合わせ「下関ゆかりの会」を開催しました。一連の行事開始は、赤間神宮が窓口で宮内庁と調整、それに業界、市長が日程調整、そしてゆかりの会の日程決定が順序でした。市長辞任後、市長の予定でゆかりの会がまず決まり、宮家献上とは別々になりました。業界出身の市長がいなければ仕方ないことです。

ふくの日神事は42年、宮家献上35年も長く続いています。それに加え、福島県沖のトラフグ、萩の桜ふぐ宣言等、新旧あるふくを取り巻く旬の話題です。