ふく百話(4)
「ふくの種類」
世界中でふくの種類はいくつあるのか。正確に答えられる人は限られた人です。大きな括りとしてフグ目で440種類、マンボウやカワハギの仲間も含みます。フグに近い10科で230種、フグ科で120種、日本近海で100種類、そんなに拡げなくても食べても良いフグで21種類です。養殖フグは含みません。海響館は230種類の展示実績があり世界一です。なおフグの学名は「テトラオドン」です。「四つの歯を持つ」という意味からきているようです。
昭和58年12月厚生労働省環境衛生局長の「フグの衛生確保について」といういわゆる局長通知がフグについて食品衛生法第6条第2号を全国的に統一する国の方針の始まりです。この通知で食用にできるフグの種類、部位が明確にされたのです。馴染みがある一番はトラフグ(シロ、ホンブク。以下括弧書きは下関周辺の呼び名)、続いてマフグ(ナメラ、ナメタ)、シロサバフグ(ギロ、カナト、ギンフグ)、クロサバフグ(ギロ、カナト、アオカナト)、シマフグ(オテラ、オマン)、カラス(クロ、ガーブク)、クサフグ(スナフグ、ハマフグ、チイチイフグ)、ゴマフグ(サバフグ)、ショウサイフグ(ナゴヤ)、コモンフグ(ナゴヤ)、ヒガンフグ、メフグ、カナフグ、アカメフグ、ヨリトフグ、サンサイフグ、イシガキフグ、ハリセンボン、ヒトズラハリセンボン、ネズミフグ、ハコフグです。私は21種類すべて見ましたが鑑別の自信があるのは15種類、食べたことがあるのは11種類です。この中でカラスが重要な種類なのに「フグ」がついていません。トラフグと兄弟種です。大きな違いは尻ヒレが黒いのです。トラフグは白いです。それで通称「シロとクロ」というのです。体紋も異なりますが素人には判別が難しいです。昭和40〜50年の唐戸魚市場は、このカラスが一番多く水揚げされていました。せめて「カラスフグ」くらいにして欲しいです。注意としてヒガンフグとコモンフグは岩手県越喜来湾、釜石湾、宮城県雄勝湾で漁獲されたものは食用にできません。筋肉が有毒です。21種以外で例外としてナシフグがあります。有明海、橘湾、香川県、岡山県で漁獲され現地加工されたものだけが流通できます。昔は大量に漁獲され、ナシフグ(通称なごやふく)は庶民の味でした。ただし正確にはナゴヤフグというフグはいません。ナシフグ、ショウサイフグ、コモンフグを総称してナゴヤフグと呼んでいます。ナゴヤフグの表示は使えません。「ナゴヤフグ」は語源に面白い話があります。昔から沿岸域で漁獲、食用にされてきました。一方で内蔵、皮に強い毒を持つことから食中毒も多かったようです。それで当たれば身の終わり(美濃・尾張)となることから名古屋フグ(ナゴヤフグ)となったと言われています。フグの種類は多いですが、関係者は法律に規定されていることは安全のため正確な理解が必要だと思います。