ふく百話(28)
「22世紀ふぐ」
10月30日の山口、日経新聞にゲノム編集トラフグ流通へというタイトルで
「22世紀ふぐ」と命名されたふぐの記事が掲載されました。記事によると
「厚生労働省の専門調査会は29日、京都大学などがゲノム編集技術を使って早く成長するよう改良したトラフグについて、届け出のみで販売と流通を認めることを了承した。11月下旬から流通させる。トマト、マダイに次ぐ国内3例目のゲノム編集食品となる」。餌をよく食べるようにしたことで、成長速度が平均して1、9倍になった。通常より早く出荷できるため、養殖の効率化が期待できるということです。以前から、いわゆるバイオテクノロジー技術を使って作られた成長が早く肉質が良いトラフグや100%白子、全部オスのトラフグの開発、いわゆるスーパートラフグの話がありました。養殖ふくの稚魚はほとんど養殖の親魚から採卵、また全雄、白子100%のトラフグはすでに流通しています。今回の記事の元となった、リージョナルフィッシュ�蠅離曄璽爛據璽犬砲茲譴弌▲殴離猜埆元蚕僂鰺�用した品種改良で少ない飼料で早く育つ、地球にやさしい高成長トラフグ「22世紀ふぐ」を開発した。厚生労働省には遺伝子組み換えに該当しないこと、また食品としての安全性に問題ないことを確認してもらった。記事を読み込むと、新品種を生み出す方法に2つあって1つは、遺伝子組み換え。これは開発したい生物に、別の生物の遺伝子を導入することによって、別の生物が持つ特性を付与する技術であるため自然界に存在しない品種が生み出される。2つはゲノム編集。遺伝子導入を行わず、開発したい生物の遺伝子に対して自然界でも起こりうる変種を再現する方法。そのため自然界にも存在しうる品種を生み出すことができる品種改良の1種類です。しかし従来型の品種改良では時間がかかりすぎ、遺伝子の影響がどのように出るかは正確に把握できない。それに比較してゲノム編集はスピードが速く、しかも自然界でも起こりうる品種改良なので安全性も問題はない。このたびの成果は京都大学と近畿大学の長年の研究努力によるものです。
第5回で「ふく養殖の歴史」を紹介しました。今回の「22世紀ふぐ」では、
「スマート陸上養殖」を取り入れていると紹介されています。AIカメラでフグの大きさを測定、自動給餌機と連動させて、給餌量を適正化、海水ろ過および紫外線殺菌で魚病と水質汚染を防ぎ、センサーで水質調整を行い、そのデーターを活用することで給餌・清掃といった現場業務の効率化・省力化・自動化を進める「スマート養殖」です。今回紹介された取り組みは「ふぐ」だけに限らず多くの生物に応用されています。水産物は最近ですが畜産においては、牛、豚、鶏と歴史は長いのです。今回の取り組みは完成されたものではないので今後も様々な課題があると思います。100%全て良しというためには畜産のように長い研究時間がかかると思います。バイオフグの課題は、成長が早いことによる肉質への弊害です。成長が早すぎると身質が良くないのです。以前、鹿児島県城山観光の奄美大島における取組を紹介しました。バイオではありませんが水温が暖かいので成長が他の養殖場の2倍のスピードでした。しかし、身質が悪く評価はいまひとつでした。また白子の大きなのふぐは身がやせています。昔はトラフグの水揚げよりカラス(尻びれが黒いので通称 クロ)がダントツに多かったのですが、白子が大きいほど身が可哀そうなくらい痩せていました。それで、ふく専門店には白子の入っていない、ふくを別に送っていました。またふく消費のピークは12月、忘年会用です。この宴席に白子があるかないかは大きな違いです。
お客様が喜び、お金が頂けるのです。業者から伺った話です。忘年会の時期になると沢山の問い合わせ電話が入ります。白子ありますかの問い合わせが多く、
ありませんと言った途端にガシャンと電話が切られたとか。冷凍の白子もありますが、10か月前に冷凍したものは生の白子に比べ、ザラとした食感で、生のクリーミーな味を経験した方にはすぐに違いがわかります。12月の白子は貴重ですが年が明けると白子は成長するので多くなります。バイオふくの白子が貴重品扱いされる出番は12月までです。大きくても身質が悪ければ二級品、
白子も多すぎては価値が下がる。なかなかむつかしい話です。

