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ふく百話(34)

「ふくはなぜ人々を魅了し続けるのか」

新年おめでとうございます。今年も「ふく百話」よろしくお願いします。

1月4日は南風泊市場の初セリでした。市長時代は主賓として出席しましたが辞任後は一度も参加していません。それでも午前3時30分からのセリは懐かしく毎年テレビで応援しています。当日は全国ニュースで何度も放映されます。

これの一番は「ふく」という高級魚、ふくと福をかけて縁起が良いこと、二番は全国で一番早いセリで注目度が高い、ほとんどのセリは5日です。三番目に袋セリという独特の風物詩が毎年話題となることです。昔から新年にふさわしい行事の一つなのです。今年のセリ高値は1キロ1万7千円でした。昨年より2千円高いですが一昨年は2万円でした。ただしこの値段は当日の最高値のことでセリにかけられた天然物すべての平均値段ではありません。今年の初セリの挨拶は郷田新社長でした。経営者が交代し時代が少しづつ代わっていくのを感じます。我々先輩は後輩の活躍と業界の発展を願うだけです。

本日のタイトル、ふくはなぜ人々を魅了し続けるのか。直木賞作家古川薫先生に伺ったことがあります。先生はその魅力を和食文化の華、とても美味なさかなだといっても下手な調理をすると毒に当たる、毒の恐ろしさを秘めている魔性のさかなだと言われました。

毒を持つ魚ということで、ことさら恐怖を与える必要はないが、それが大きな魅力の一つだと思うと言われことを思い出します。

北九州市の北橋市長とふく料理で会食をしたことがあります。それぞれ市長と副市長で4人です。下関市内の居酒屋を借りて私がふく刺しを作りました。宴会が始まり北九州市副市長と下関市副市長は旨い、旨いとふく刺しを食べているのになぜか北橋市長は小鉢のお通しを食べているのです。不思議に思って「北橋市長、どうかされましたか」と尋ねたら「実は怖いのです」と言われました。私が作ったふく刺しが信用できないようでした。私は免許を持っていますし、ふく業界で35年間働いてきました。フグ毒は30分もすればわかると言いますから両副市長が食べてすでに30分は経過しています。安心してお召し上がり下さい。それからようやくふく料理での会食が始まりました。後日、北九州市役所部長会で講演した後、北橋市長行きつけの小さな居酒屋で懇親会をしました。中ぐらいのお皿で「ふく刺し」が出ました。中尾市長がこられるので私の方もふく刺しを準備しましたと言われました。ふく談義で盛り上がったのは言うまでもありません。北橋北九州市長と8年間のお付き合いがありました。北九州経済圏を担う両市の夢、課題を何度も語り合いました。互いに切磋琢磨しながら両市の発展に尽くしました。懇親が深まった縁は「関門海峡とふく」なのです。