ふく百話（４７）
「下関ふく通信」
水産大学校のホームページを検索していたら「下関ふく通信」というのがありました。発行は下関ふく共同研究機関です。掲載場所は教員研究情報・産学公連携です。２４号まで記事があります。その一は「ふぐを見定めるめきき技術の開発事始め」です。研究のめきき技術には２つのテーマがあります。�〇┝鏨嬖未瓩�き技術。��品質めきき技術です。どちらも今日的テーマで研究の成果が楽しみです。内容が興味深いので読み続けていると、後半は「イベント報告」でした。
２４回掲載でイベント報告は１回目のみですが、そのタイトルにびっくりです。
「中尾市長によるふく料理教室を開催しました」です。全国で唯一、ふぐ処理師の資格を有する中尾市長が市内小中学校教職員対象に「ふく料理教室」を開催したという内容です。なつかしく拝見しました。水産大学校のような専門機関に私の紹介を掲載していただき光栄です。その七は「雑種について」です。今回の百話です。これまで雑種については有明海におけるシマフグとナシフグ、瀬戸内海におけるコモンフグとナシフグ、山口県のトラフグとマフグの雑種が知られています。呼び名は「雑種」「まがい」「交雑種」です。
それぞれその割合が１％未満であるのでこれまで大きな問題とはなりませんでした。魚市場勤務時代、学者から交雑種については劣性遺伝なので子孫は継続しないと聞いていました。ところが近年、岩手県沖から茨城県沖にかけての海域で
たくさんの種類の雑種ふぐ（種類不明）が見つかっています。調査では全体漁獲量の４０％も占めており「空前の規模で、フグの種間交雑」（記事の説明分）が起きています。厚生労働省の指導では「まがいふぐ」はより毒の多い種類を選択することになっています。例えばトラフグとマフグの交雑種では、皮に毒のあるマフグの取り扱いが適用されます。ところが今回のような事例は親フグの種類が特定できず現場は混乱しているようです。原則は廃棄処分です。
ここからが近代研究の出番です。昔は外観特徴からフグの種類を判断していましたが今はそれに加えて遺伝子のような科学的研究も進んでいます。
また大規模交雑の原因調査のためには交雑の方向性が大切だということです。
すなわちどちらの種が雌親で、どちらの種が雄親かを調べることでわかるそうです。その結果８割近くがゴマフグを母親としていたのです。仮説では地球温暖化によって日本海側に大量に生息するゴマフグが津軽海峡を越えて太平洋側に分布を拡げ、津軽暖流によって福島県や茨城県沖に達し地元に大量に生存するショウサイフグと大規模な交雑現象を起こしたのではと述べられています。
今後、交雑種が減少するのか、雑種同士で交雑を重ね新しい種となるのか推移が注目されます。業界も混乱しているので適切な対応が求められます。
