ふく百話(64)
「世界のフグ食」
「ふく百話」49回で西日本ふく研究会について紹介しました。会の設立は平成4年(1992年です)。30年が経過します。初代会長は小野英雄、仕掛け人は松村久さんです。全国の研究者が市場に出入りし、体長測定、漁場聞き取り調査、販売原票コピー等されていました。当初は山口県、それに水産大学校、その後、西海区水産研究所(国)などでした。シーズン中、何度も市場にこられますので松村氏の呼びかけで関係者が一堂に会する研究会が設立されました。
南風泊市場活魚センターで勉強会の後は、ふく大懇親会です。安価な料金でふく料理フルコースです。ふくの魅力にひかれた全国の研究者の情報交換会でした。
現在はコロナ下で活動は休止中ですが全国に広がる「ふく研究会」です。
記念誌を3回、出版しています。年月の経過とともに人が代わり、研究テーマも変遷があります。ふくに特化した研究会なので市民の目にふれる機会は少ないです。下関ふく伝道師を自認する私としては、この会の成果を含め次代へ引き継ぐ責任があります。このたび私は下関くじら食文化を守る会の会長に就任しました。市長時代から、くじら日本一の町を目指してきました。これは文化の継承の重要性と市への経済効果が大きいと判断したことからです。
この会の運営責任は大きいものがありますが、私の原点は「下関ふく」です。下関を代表する両ブランドをこれからも盛り上げていきます。
薄れていく西日本ふく研究会の成果を6回シリーズで書き留めます。
「世界のフグ食」。我がふく研究の恩師、元水産大学校教授、長崎大学名誉教授の多部田修先生です。10周年記念誌に掲載されました。記事の内容は当時。
(1)フグ食の歴史。日本の縄文貝塚(本土と沖縄)、エジプト(ナイルフグ)、旧約聖書や中国の「山海経」に記録があります。桃山時代(1500年以前の記録は不明)、欧州16〜17世紀の絵や江戸時代の文献があります。中国の天津、山東省の渤海沿岸、蘇州付近にもあります。
(2)現今のフグ食。フグ食禁止国(域)またはフグ輸入禁止国。ハワイ、米国(最近では処理フグ輸入許可)、中国、キューバ、モーリシャス等。
(3)フグ中毒の報告例。先史時代は日本の縄文貝塚(千葉県姥山貝塚)。最初の記録はKaempfer1728年( ドイツ人の博物学者、医師)が著わした「日本誌」の中のフグ中毒の記述。キャプテンクック(1774年9月7日)が世界一周中、東南アジアでフグ中毒にかかり一命をとりとめた話。現代では日本、韓国、中国、台湾、フィリピン、タイ、インド、オーストラリア、トンガ、フィージ、ハワイ、
アメリカ、キューバ、イギリス、南アフリカ等の報告があります。ただし、フグ食習慣の証拠にはなりません。
(4)利用種から見たフグ食文化圏。�.肇薀侫偉燹F�本、韓国、中国。トラフグ類の特異な分布、中国、日本、韓国には固有のフグ食がある。中国のメフグ食。�▲魯螢札鵐椒麥燹G�帯、亜熱帯の海洋諸国。ハリセンボンよりも、ヒトヅラハリセンボン、ネズミフグ、イシガキフグ等。沖縄、奄美諸島、太平洋、西インド諸島等。地域により有毒種がある。アメリカ産フグ類。ヨリトフグ属。メキシコ、太平洋岸域、チェサピーク湾等での海のヒナドリ料理。�ぅ汽丱侫偉燹F�本、韓国、台湾、ブラジル、シリア、カリブ海、アフリカ西岸。�ゥ▲侫螢�産フグ。アフリカ中西沿岸諸国。アンゴラフグ(新称)。多くの国で生鮮、塩干、燻製あり。ただし、ガーナでは禁止。
�γ舷綮坤侫偉燹C羚顱�東南アジア諸国、アフリカの一部等。食用種は中国のメフグ。南京、蘇州、中国中南部では養殖もある。アフリカのナイルフグは食用と太鼓の皮に使用している。タイ国では内陸の淡水魚をまとめて食用にする習慣があり、その中に有毒淡水産フグが混入し、中毒する例がある。
多部田先生は報告の終わりに、世界のフグ食を研究する中で、情報不足、食用となる種類、新種の発見、同種、同属のフグの地域別による毒性、安全性の確立が課題だと結ばれています。
現在のわが国では紹介のように、たとえ世界で食されていても厚生労働省が発表している21種類とナシフグ(例外)だけが食用可能です。

